木材というのは、均一ではありません。工業的にはとても扱いにくい材料だと思います。
しかし、日本では豊富な木材資源があり、昔から使われてきた材料です。
一本一本材料にこだわり、材料の個性(くせ)を見極め刻んでいく。
木材は同じ材種だとしても1本1本の個性、強さ、固さなど様々あり、その1本1本をしっかり吟味しながら手刻みを進めています。微調整し適切に組むことで力を最大限に発揮できるようになります。
地域で育った材料は、その気候に適していて、尚且つ馴染んでいます。
それら不均一な材料を見極めながら、無駄なく使い、最大限に生かす方法として手刻みが最適だと考え、こだわっています。
木の特性や弱みを考え、納まり(仕口、継手)などを変えたり、場所ごと長さを調整しています。
例えば土台の部分では、ほぞを貫通させ、荷重を基礎に伝え、木のめり込みに対応し、それ以上下がらないようにしています。
柱と横架材の接合部のほぞの長さはできるだけ長くし、地震時の抜け防止と、横架材のねじれなどにも考慮し、加工長さを決めています。
木造では断面欠損などで、地震時に弱点になってしまうところも、異物である金物だけに頼るのではなく、加工の工夫で弱くならないように検討しながら加工しています。
木材と金物との関係では、できるだけ、木同士の仕口、継手ではどうしようもない場合は、補助的に金物を使用します。それ以外は、木は常に動き、膨張収縮をしているので、木同士での接合の加工を行っています。
今日、プレカット全盛の時代に手刻みをする理由として、自然の生きた木を使っていること。
家で重要になる構造材の加工を図面と打ち合わせのみで創りあげられてしまうプレカットに、不安を覚え、今も手刻みをしています。
プレカットでは曲がりやねじれなど、木の個性であるものは、最初から使用せず選別してしまう。
手刻みではそのような個性を最大限に活かせる配置をして造り上げていく。無駄にせず使っていく。
加工も機械を使うところ、手で刻むところを使い分け材料を最適な形で加工していく。
いろいろな性格を持った一本として同じものはないものを一棟の家にする。
一本一本の特徴を欠点を長所に変え調和のとれた一つの集団に育て上げること。