
そとの腰壁を創ってます。
木材を加工する=刻み
今回の刻みは、納まりを考えて、雨仕舞を考えて、木を準備して、大きさを決めて、印をして、加工して、仮に組んで調整して、仕上げて、防虫防腐処理して、組上げて、現場に納める流れなんです。
その今は終盤の防虫防腐処理をしてます。
その中でも色々試行錯誤を重ねて進んできたんです(^ー^)

こんにちは。
大竹俊光です。
今回は、そんな木のお話。
外で使う木の腰壁なので、より多く検討を重ねてすまいを守る大切なパーツを創ってきました。
木は【腐る】
当たり前なのですが、それをどう長持ちに、メンテナンス性を良くして、どのように納めているか、考えているかをまとめてみました。
今回は【腐る】を少しだけ深堀してみました。

木は、変化し、時を刻みます。
メンテナンスをすることで、より長持ちになったりします。
ただメンテナンスだけではなく、創る時の工夫によっても、持ちは大きく変わってきます。
特に外で使うときは、雨、風、紫外線などなど環境はきつく維持することが難しく、より工夫が必要になってきます。
悩ましいものなんです。
そこでまずは、木がどのように腐る(腐朽)するのか、ひとつの基準が設定されていますので、ご紹介。

使用状況に応じた腐る原因がまとめられた表です。
大きくは、シロアリを思い浮かぶことかもしれませんが、他にもたくさんあるんです。
この表は、JIS規格で定められた木材の腐朽(腐り方)がまとめられたもの
✳ISO21887:2007
使用状況により、腐る原因が異なる、設定されている表なんです。
基本的に水分がどの程度、どのように木と接しているかの設定がされています。【1】はなく、【5】に近くなるにつれて水分と接している時間が長くなっていきます。
ユースケース【1】は、水分から守られている状態。にも関わらず危険に曝されています。ってことは、木は何かしらの防護策を講じなければ怖い部材なんです。雨や水から守られているのに…。
乾材害虫・・・乾燥した材料に対しても害を及ぼす虫。代表格として、カンザイシロアリなんです。
ユースケース【2~】は、少しずつ水分に接する時間が長くなっていきます。湿るとは、含水率30%程度以上になることを示しています。
その状態から、腐朽菌や、シロアリの被害が出てくるそうです。
今回刻んでいるそとの腰壁は、部分的にですが、ユースケース【3】に該当します。
・表面汚染菌
・変色菌
・木材腐朽菌
・シロアリ
に対して対抗策が必要になります。
具体的に
①水分ができるだけ早く乾く納まり
②素材を気を付ける
③保存処理(対抗薬剤又は自然素材)
と考えております。
①水分ができるだけ早く乾く納まり

日本の伝統的な納まりのひとつ
鎧張り
こちらは、水を外に流し、水切れを良くするための工夫がされています。
また、部材の腐朽が進んでも、部材の交換が容易なようにパネル状にし、部品の交換ができるように納めております。
②素材を気を付ける

より心材(赤身)を選ぶ。
ただし、全て心材で、目の整ったものというものでもありません。
すまいのどの部分の腰壁なのか、
一番は玄関周りの腰壁を立派に。そのあとは徐々にコストバランスを考慮したものに変化していきます。
今回の場所は、裏の勝手口付近。
ということで、できるだけ心材。
所々に辺材(白太)を配しました。

心材と辺材の配置のバランスも、以前解体したときの白壁の痛み具合で、雨水の辺り方や、乾き方などを想像しながら配置計画をしています。
建物の配置、方位、風の具合でどう抜けるか等々様々なバランスで同じ建物、同じ面でも微妙に異なる環境が生まれます。
だからこそ、それらを想像しながら、部材を刻み、部材を選び、その部材のどの部分がふさわしいか…など考慮して進めてきました。

なぜそこまで考慮が必要か…。
というと、簡単に言うと心材が強いから。
それは、先代の教え、先祖の教え、改修工事の際の木材の状況を目にすることで、学び、実感したために必要性を感じ配置しています。
また、論文でも実験結果の裏付けもあり考慮が必要なんです。
※受けの表は
日本木材防腐工業組合
http://www.jwpia.or.jp
202109021715028575.pdf
の資料の中からお借りしたものです。
それによると、
杉は、
[辺材:心材 = 4.5:6.0 = 1:1.3]
【1.3倍】防腐性能が高い結果が出たようです。
ちなみに
桧は
[辺材:心材 = 5.0:7.0= 1:1.4]
【1.4倍】防腐性能が高い結果が出たようです。
このように、大きな差がでてくるんです。
この実験は、木が土と接した箇所の腐朽の期間であるので、腰壁になると、もっと長持ちすることになります。
③保存処理(対抗薬剤又は自然素材)

ホウ酸処理
特徴
・安全で自然に優しい
・腐朽菌、シロアリ、キクイムシ、カビに有効
・金属を腐食しない
・ネコなどの動物には害が少ない
(とてつもなく大量に接種すると体調を崩してしまう)
・雨に弱い(流されやすい)
代表的な特徴を並べてみました。
ホウ酸塩とは、揮発しない、鉱物なので安定する。
腐朽菌や、カビには、細胞膜を通して細胞内に拡散して菌を死滅させることができる。
シロアリ、キクイムシが摂取すると、肝臓が無いため処理、分解できず細胞内の濃度が高まり死ぬことになります。また死骸を食べたシロアリなども同様に死んでいきます。
自然に優しいというのは、野菜や、果物などの栽培などで肥料としても取り扱われる素材なんです。
ただし、水に弱く、流される(溶脱)してしまうので、雨に濡れると効能が弱まるということになります。
今回はその点に関しては、①、②の強化をしたのでそちらで持ちを考慮しながら、できるだけ、長持ちするように進めてきました。

刻み、仕上げを終えた部材全てにホウ酸処理。
表裏のみならず、ホゾや、ほぞ穴に至るところまで隅々塗ることで、木材を保護しています。
また、仕口は、一度水が入ると乾き難いため、より重点をおいて塗布しています。

刻みもラストスパートに入り、気合いを入れ直し進めております。
ブロクの中でデータをお借りしさせていただいたことにお礼を申し上げます。
出典
○○
木材腐朽のメカニズムとその防止
桃 原 郁 夫 さん
木材保存Vol.42-3(2016)より
○○
日本木材防腐工業組合
http://www.jwpia.or.jp
202109021715028575.pdf
○○
NPO法人 ホウ酸系木材保存剤普及協会
荒川 民雄さん
ホウ酸塩処理木材と超長期住宅
○○
より参考にさせていただきました。
ありがとうございました。

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